ようこそ全書芸一般部(漢字)~紙の大きさや種類

土屋彩明
(新潟県見附市)

書道を始めたばかりの方によく聞かれるのが紙についてです。
書道で使う紙は「大きさの分類」「紙の種類による分類」「商品名としての名前」といくつも呼び名があるので、慣れないうちは分かりにくいですね。
簡単に解説してみようと思います。

まず分かりやすいのが「大きさの分類」ですね。
「半紙」「八つ切り」「半切」「全紙」「二×八尺」「三×六尺」などがこれに当たります。
書道用紙はコピー用紙のように大きさの規定が厳格でなく、大きな物だと特に数センチくらい誤差があったりもしますが、大体の規格としては以下のようになります。

ようこそ全書芸一般部(漢字)~紙の大きさや種類土屋彩明新潟県見附市

よく聞くのは大体こんなところでしょうか。

普段のお稽古は半紙が多いですね。
これは昔は倍の大きさの紙の規格があって、それを半分に切って使っていたので「半紙」と呼ぶのだそうです。
現在は半紙が主流になったので初めからこの大きさで作られています。

八つ切り、半切はどちらも全紙から切り分けて作る大きさですね。
「条幅」は広い意味では細長い大きな作品全般を指すので本当は「条幅=半切」ではないのですが、一番身近なサイズなので半切作品を指して条幅ということも多いです。
全書芸の月例条幅も半切サイズですね。

二×八尺などは展覧会に行くとよく見かけるのですが、それ以外では馴染みの薄いサイズかもしれません。
やはり大きい分だけ迫力のある作品が作れるので、半切や全紙に慣れたらいつかぜひチャレンジしてみて下さい。

そして次に「紙の種類による分類」があります。
こちらは話が複雑で、作り方で「手漉き」「機械漉き」、厚みによって「単宣」「夾宣」、材料によって「綿料」「浄皮」など様々な用語があります。

数え上げるとキリがないので、特によく聞くものだけ並べてみますね。

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ざっとこんなところでしょうか。
他によく聞く単語で「画仙紙」(がせんし)というものもありますが、これは話す人によって定義がまちまち(私の感覚では綿料単宣のことですが、これも絶対ではありません)な難しい言葉なのでここでは省きました。

その他にも色々な種類がありますし、同じ「綿料単宣」に分類される紙でも産地やメーカーによって使い心地は全く違うものなので、あまり原則に振り回されない方が良いかなと個人的には思います。

こういった書き心地については紙屋さんが相談に乗ってくれるので、慣れないうちは「公募展に出す草書の二行書き用の半切が欲しい」「練習用に遠慮なく使える手頃な値段の半紙が欲しい」などと具体的に相談すると、条件に合う紙のサンプルを出してくれます。
その上でいくつか試し書きをさせてもらって選ぶと失敗が少ないですね。

ちなみに書道用の紙は「寝かせる」といって使わずに保管しておくことがよくあります。
一般によく寝かせた紙の方が書きやすいと言われていて、作られて十~二十年くらい経った紙を好んで使う先生もよくいらっしゃいます。
買った紙が気に入らなくて「失敗したなあ」と思った時も、こうして寝かせておくと書きやすくなることもよくあります。

ただ、書道用紙は湿気に弱い(カビたりシミが出たりします)のでご注意下さい。
紙屋さんによると、なるべく風通しの良い部屋の、本棚の上など高いところに保管しておくのが良いそうです。

そして最後に一点、紙を購入する時に気を付けたいのが「商品名が同じでも、同じ紙とは限らない」ということです。

書道用の紙の多くはメーカーが作った時には固有名がなく、品番で呼ばれているのだそうです。
それを仕入れた紙屋さんが、各自で名前を付けて売り出すのですね。

なので同じ紙が紙屋さんAでは「白雪」、紙屋さんBでは「紅梅」という商品名でそれぞれ売られている、というようなことが起こります。
そして紙屋さんBがたまたま全く別の紙に「白雪」と名付けたりもするので、もう商品名では紙を特定できなくなるのです。

ちなみに、同じことは筆などでも起こります。
ちょうど和菓子屋さんで「薄月」とか「夕時雨」というお菓子を頼むとお店によって全く違うお菓子が出てくるようなもので、そう思えば珍しい話ではないのです。

ずっと同じ紙屋さんで買い続ければ問題はないのですが、別の紙屋さんのセールチラシやwebショップなどを見る際は注意が必要ですね。
中には「毛辺」「白連」「紅星牌」など固有の名前がある紙もありますが、ほとんどの場合「同じ名前の紙でも、お店が違えば違う紙」と思っていた方が失敗は少ないと思います。