消えた、街

ペンネーム悪筆子

店も五本指に入らないくらいしかなくなり、取り壊して空き地になるとこも出出した街は人がいない。夜は飲み屋街になるので数少ない店も五時前にはさっさと店を閉める。街の裏の住宅地は空き地だらけで歩くのも物騒になってきた。
お年寄りしかいないスーパーで買い物して重い気持ちを引きずり川辺を歩き山を眺める日々。相変わらず書道も手本どうりに書けないのであまり気乗りがしない。

あまりに気が重いので思い切って毎朝蘭亭を書いてみる。提出もなく手本どうりでなくていいので気分は軽い。ぼんやり書いていて退屈なので訳を読んでみると人生の無常さを嘆いていて、今の気持ちとぴったりで嬉しくなり、心なしか手本の文字からも筆者の思いが出てくるような気がする。(天来書院、蘭亭序 二種〉
手本をよく見ると二種類の手本が載っていてよく見ると字が全く違うところもあることを発見。ふむと一人で感心する。
光村図書 高等学校芸術科 I 書道には虞世南が衣服の重みにも耐えられない程痩せ細っていたことなど紹介されて面白い。 
お習字のお稽古はこのような余計なことは一切なく、ひたすら字を上手く書くことにのみ集中し、堅苦しく、陰険でさえある。
もっと親しく触れられたらいいのにと思いながらも一人で古の人の残した書を書きながら味わうことができるのも苦しいお稽古の賜物と気がついた。

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