子どもに教えるコツ~右払いの教え方~

土屋彩明
(新潟県見附市)

子どもにお習字を教える時、難しいことの一つに「右払いの教え方」があります。
一生懸命先生の動きを真似して書いても、中々あの三角の払いが書けず、四角い払いになってしまうことがありますね。

あれはどうして失敗するのかというと、払う時の筆の向きに問題があることが多いのです。

4.右払いの教え方・画像1


図で示したように、払いに入る前に筆の向きを変えてしまう子が一定数いるように思います。
右払いを当たり前に書ける人からすると「何故そこで向きを変えるの?」と不思議になりますが、これには彼らなり理由があります。
ここで筆を横向きにすると、横に引っ張って払う時に摩擦が少なくなり、筆が楽に動かせるからです。
横棒を引く時に筆を横向きに、縦棒を引く時に筆を縦向きにすることを、書道では「直筆/ちょくひつ」といいます。
細かい技法の話は省きますが、この直筆で動かした時が筆は一番摩擦が少なく、最も軽く動かせるのです。
だから先に挙げた「右払いで払う前に筆の向きを変えてしまう」子は、習い始めて1~2年くらい経っている子が多いです。
筆を動かしやすい方法を経験的に知っているから、向きを変えてしまうのですね。
逆に完全な初心者は手数を省いてサクサク書こうとするので、字のバランスなどは整わなくても右払いだけはあっさり三角に書けたりします。

こうして「三角の払いが書けない原因」が分かっているのですから、これにはもちろん対処法があります。
簡単に言えば、払う時に筆が縱向きになっていれば良いのです。

私も今まで色々試してみたのですが、どうやらこの下図の手順で教えると、子どもたちには分かりやすいようです。

4.右払いの教え方・画像2


「これでどんな子もすぐにできるようになる」という物ではありませんが、四角い払いを書いてしまう子の練習としては妥当なところかと思います。
また、練習の際は1の筆を入れるところと2の払い始めのところに高低差があると成功しやすいので、文字で言うと「火」「木」などがこの練習向きです。
「道」「建」などの字はこの高低差が少ないため成功しにくく、単純に右払いの練習をしたい時には不向きです。
まずは練習しやすい字で三角の払いを書けるようになってからの方が、「道」「建」などの字も上手く書けると思います。
ちなみに、これはあくまでも「三角の右払い」を書けるようにするための簡易的な練習法で、全てのお手本の右払いがこの書き方をしている訳ではありません。
1の筆を入れる時、少し斜めや横向きで入れる場合もよくあります。
「縦に筆を入れる」やり方で三角の払いが書けるようになったら、ぜひそういった他の書き方のお手本も学ばせてあげて下さい。
どの角度で筆を入れても、3の「払い始めの時に筆が縦向き」になっていれば、三角の払いは書けるはずです。