編集部放談「こう見て欲しい全書芸誌3」古碑法帖研究・図版・参考図書

全書芸スタッフ

2020年70周年を迎えたロングセラー月刊書道競書雑誌『全書芸』のバックナンバーから歴史・魅力に迫ってまいりましょう。

全書芸誌をご購読されている皆様、120%全書芸誌を活用できるよう編集部からのメッセージをお届けします。ご一読ください。
全書芸誌の購読歴が40年!!という方は、学書の糧に振り返りに。
そして、はじめましての方は、70年間基本的なスタイル(誌面構成)は変わっておらず、確実な学書の過程にあるこの考え抜かれた本の理解を深めていただけることを願います。


1983年度(昭和58)編集部放談「こう見て欲しい全書芸誌1~4」から。
参加者は、竹石古谿・宇賀寿子・淺沼一道・酒井洋龍・梶田越舟の5名の諸先生方。

前々回の「こう見て欲しい全書芸誌1」・前回の「こう見て欲しい全書芸誌2」もぜひご覧ください。

全書芸1983年昭和58年7月号表紙:副島蒼海書
1983年(昭和58)7月号表紙:副島蒼海 書

月例課題の古碑法帖研究

口絵図版に示される古碑法帖の課題は、書法上必修とされている漢魏晋唐にわたる著名な碑帖や、日本の名蹟の中から書体、書風のバランスを配慮して採択。

漢字の書体には、楷行草隷の他に、篆書、古文もありますが、まず一般的な書法研究の対象となっている楷行草隷に照準を合わせています。

全書芸誌での課題提出は、一法帖を4か月、年間3種で、そのうち隷書は必ず加え、他の2種を楷行草の中から吟味精選。

1種を4か月で学ぶのは容易ではく、掘り下げていくと際限のない性格のものですので、一期習ったらしばらく間を置き、改めて新鮮な感覚で取り組むことも良いと考えています。
次の課題を習っている間に、目や力も向上してきますから、新たに気づく事や見えてくるものがあるはずです。
↑↑ここに学書のねらいがあるといえるでしょう。

もちろん、これぞ!と思う法帖に出会った時、課題の外に追求できる人は大いにやるべきです。

年間3種類の書体、書法を平行して扱い、総合方式での書技向上をはかっています。
色々な法帖研究の糸口を提供する役割も果たしています。
ひと通り基礎習練を積み、四体が概ね書き分けられるくらいになったら、自身の骨格となる法帖に徹底して取り組むのが本筋。
師範位取得までは、各体、何種類かの書法を一応理解することが要求されます。
本格的な研究は師範到達以後になるでしょう。

習い始めてから数年間は、学書の励みと進度の目安として月例競書や四体の循環方式での学習、昇段級試験も効果をあげています。

図版と参考臨書

古碑帖の図版は、毎号部分掲載になっていますが、全体感を把握して帖や巻の前後の起伏を踏まえて臨んだ方が解釈に深まりが得られます。
法帖類は先々必備の学書資料として各自が単本を揃えたいものですね。
下記の出版社の他、安価な影印本から手を尽した精印本まで発行されていますから、最小限度自分が手がける法帖は購入して活用が望まれます。

線の鍛錬と作品の鑑賞眼を養う

古碑帖研究では、筆をとる前に、原本見開き2ページを入念に観察することから始めます。観察の段階で2ページにわたる趣、特徴を判断し、習う部分の字々、点画の書法を頭の中で理解し、更に半紙で用筆の実際を反復練習して、という手順が基本でしょう。

法帖でも、真蹟本(肉筆そのままの図版本)は、筆路、点画のあり様がわかりやすいですが、刻本(拓本、白抜き文字)は、はっきりしない箇所も多いですから、観察の時点で、五体字類のような字典で調べたり、同時代、同傾向の字から判断したり、この種の字典も必備図書ですね。

半紙臨書部は、簡潔な文章表現ですが、内容は凝縮された含みの多い事柄ですから、かご字(字の周りの線のみ描かれたもの)解説も有効に参照して欲しいですね。
かご字解説についてですが、月例の競書作品の中には、かご字を手本にしたと思われる清書を見かけます。あれは補助的な説明で概略を線描したもので点画の微妙さは示されていません。実習手本は原本の図版によるべきです。

手本の依頼が先行して丸写し的な勉強より、及ばずとも全力で習作し添削批正をうけるようにしたいものです。



実によく考え抜かれた月刊書道専門誌だということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
現編集部へのご意見・ご感想、事務局まで。

次回は、編集部放談「こう見て欲しい全書芸誌4」をお届けします。
つづく。