ぶらっと見て歩き②ー全書芸展ー2021/12/9~12/20(於国立新美術館)

古谷春峰

美術を見て楽しむ愛好家は多いですね。
特に日本画、洋画、工芸などは、どこの展覧会に行ってもたくさんの人がいます。(さすがにコロナ禍の中、ここ1.2年は少ない状況ですが。)
ところが、書展というとぐっと人が少なくなります。
その理由はどこにあるのですかね。

書展を見る愛好家が少ないわけ

その理由①・・・分かりにくい。
特に、文字を素材にしているので読んでみたいと思うけれども読めない所にあると思います。
書いてある内容は、主に漢詩文か和歌です。
漢詩文は中国語ですので、全くの外国語なのです。
よほどの素養のある人でもスラスラ読めません。
特に、書の古典を書いたもの(臨書作品)は石碑などに刻されたものですので、さらに読みは難しくなってきます。
かなの作品も千年も前に使われた、かな文字を使って書いていますので、現代の人が読めるはずがありません。
何百種もある、かなから選ばれて、今日使われている“平がな”ができたのです。
ほんの48種しかありません。
ですので、かなが読めないというわけです。

その理由②・・・黒一色で色彩も形も無く単調であるように思われていることです。
また、同じような作品が並んでいる(画一化されている)書展が多いので、つまらないと思う人もいるでしょう。
全書芸展は違いますよ!!)

まだ他にも、愛好家が少ない理由はあると思いますが、書展を見に来られる人の多くは書をやっている方々だと思います。
書をやっていない方にも是非書展に来て頂きたく、書展を楽しく見るポイントを思いつくままにお伝えします。

書展を楽しく見るポイント ー漢字を中心にー

まず最初にお伝えしたいのは、書展の見方など特に堅苦しい決まりは一つも無いことです。
自由に見て頂きたいと思います。
ここでは、より楽しく、有意義に見てもらう為に私の考えるポイントを上げていきます。

  1. 書いてある文字を読もうとしないで、絵画を見るように字形や線の表情、美しさを見て下さい。
    (読めるに越したことはありません。どうしても知りたい場合は、受付で貰うパンフレット(作品目録)を見ると分かります。他展では、作品の名票に書かれていたりモバイル端末を使って色々検索できる所もあります。書展も変化してきています。)
  2. 書展は数が多いですから一点一点じっくり見るのは難しいと思います。
    ですので、ぶらっと見て歩き、これが気になるなという作品をじっくり鑑賞してください。
    それがあなたの感性に適った作品だと思います。
    点数を絞って、じっくり見ていくと書道をやられていない方でもきっと色々な事を感じられるはずです。
    これを繰り返していくと自然に鑑賞力が身についていくと思います。

これだけは知っておいて欲しい!

1.創作と臨書について

書の作品は、創作臨書があります。
創作は、オリジナルな独自の表現で出来た作品のことです。
(しかし書は長い伝統のもとに育まれて出来た芸術ですから、何らかの影響を受けない純粋なオリジナル作品は皆無と言えるかも知れません。書道の本に載っている現代の書家の作品・手本を見て書いて創作作品として出品することは、本来あってはならないことだと思います。)
創作は名前(号)の下に○○書、と書いてあります。
※ ①行書や②草書で書かれている事が多いです。
※ 名前(号)の下に何も書かれていない場合も、創作となります。

臨書とは、長い書の歴史の中で残されてきた優れた作品(古典)を学び、書かれた作品のことです。
古典の一部分を書いて、自分の思いを込めて作品として仕上げます。
単なるコピーではありません。
創作と何ら価値が変わる事はありません。(これが全書芸の基本的な考え方です。)
名前(号)の下に〇〇臨、と書いてあるのが臨書作品です。
※ ③行書や④草書で書かれている事が多いです。

ぶらっと見て歩き②-全書芸展-2021/12/9~12/20 (於国立新美術館)古谷春峰全書芸展

2.書体について

漢字は3000年以上もの長い歴史があります。
その間に、時間と共により書きやすく、より美しく表現が変わってきました。
その間に残された典型的な表現は、今日書体と言われています。
楷書、行書、草書、隷書、篆書の5つの書体があります。
そこに様々な書風・趣が、時代、風土、人間性などと絡んでくるのですから、書の表現は無限で奥の深~~~いものなのです。
楷書、行書、草書、隷書、篆書の5つの書体がある事を覚えておいて下さい。
(ここに日本で生まれた、かなが入ります。)

ぶらっと見て歩き②-全書芸展-2021/12/9~12/20 (於国立新美術館)古谷春峰全書芸展
ぶらっと見て歩き②-全書芸展-2021/12/9~12/20 (於国立新美術館)古谷春峰全書芸展
ぶらっと見て歩き②-全書芸展-2021/12/9~12/20 (於国立新美術館)古谷春峰全書芸展
ぶらっと見て歩き②-全書芸展-2021/12/9~12/20 (於国立新美術館)古谷春峰全書芸展


何でも利用して楽しもう

1. 受付では・・・

必ず出品目録を貰い、できれば署名をしましょう。(これがマナーです。)
受付の近くには出品者の検索コーナーがあります。
知り合いの作品を探すには大変便利です。

2. 会場では・・・

どこの書展でも必ず会場係がいます。
全書芸展も、漢字・かなのそれぞれの係がいますので、聞きたいことがあったら何でも聞いて下さい。
また、何人か集団で先生らしき?人が説明をしている場面に出会ったら一言断って仲間に加わるのもよいでしょう。
思わぬ拾い物があるかも知れませんよ。
写真を撮るのも大概はOKです。(念の為、貼り紙などを見て確認して下さい。)

3. イベントに積極的に参加しよう・・・

会場解説、席上揮毫、体験コーナーなど各書展では、来場者に楽しみながら書を知ってもらうイベントが開かれていますので積極的に参加してみて下さい。
(ただし、コロナ対策の為中止するイベントも続出しています。残念ですね。)

4. 最後に・・・

取り留めのない内容で申し訳なく思います。
書展を楽しむ為の、思い付いたことを書かせて頂きました。
書展見学の参考になれば幸いですが・・・。
また書に携わる私達も、より魅力ある作品制作に一層努力していきたいと思っております。

幾分急いで書いたので、書き足りない事や不十分な点等、たくさんあります。
今後、気が向いたら“書を学んでいる人向け”のアドバイスのような内容もお届けできればと思っています。(が、あまり期待しないで下さい。)


【第50回全書芸展 開催案内】
■会期 2021年12月9日(木)-20日(月)
   *10:00-18:00(最終入場は17:30)
   *12月14日(火)休館
   *最終日は14:00閉展( 最終入場は13:30)
■会場 六本木・国立新美術館 2階(展示室2B・2C・2D)
    東京都港区六本木7-22-2
    TEL:03-6812-9921(会期中)
■後援 文化庁・東京都
■入場 無料
■展示 公募・無鑑査・展覧会委員・委嘱役員小品の1,309点
■特別展示 近世大家遺墨8点・全国書道コンクール優秀作品300点

第50回全書芸展国立新美術館12月9日文化庁東京都後援目良丹崖全日本書芸文化院