ようこそ全書芸一般部(漢字)~手紙の書き方

土屋彩明
(新潟県見附市)

10月になると郵便局やコンビニに年賀状のカタログが並んで「ああ、今年ももうそんな季節か」と思います。

書道の専門学校に通っていた頃、実用書の授業の中でこういったハガキやお手紙の書き方を習ったのですが、そこで初めて知って驚いたのが「相手に関する言葉は紙面の真ん中より上に、自分に関する言葉は紙面の真ん中より下に書く」というルールでした。
言葉だけでは中々ピンと来ないと思うので、実際に見てみましょう。

ようこそ全書芸一般部(漢字)~手紙の書き方土屋彩明(新潟県見附市)長谷川陽幸書道教室



全書芸誌で勉強をしている「私」が、やはり全書芸に所属していらっしゃる「××先生」に宛てて書いている手紙だと思って下さい。

いかがでしょう、一見言葉遣いも丁寧で、良いお手紙に見えますね。
でもこれは実は、書家が書くには少々マナー違反のお手紙です。
「相手に関する言葉は紙面の真ん中より上に、自分に関する言葉は紙面の真ん中より下に書く」というルールが守られていないのですね。

分かりやすいように、相手に関する言葉と自分に関する言葉に色を付けてみます。

ようこそ全書芸一般部(漢字)~手紙の書き方土屋彩明(新潟県見附市)長谷川陽幸書道教室


相手(この場合は××先生)に関する言葉をピンク、自分に関する言葉を青に色付けしてみました。

お手紙のルールは「相手に関する言葉は紙面の真ん中より上に、自分に関する言葉は紙面の真ん中より下に書く」ですから、本来はピンクの言葉が真ん中より上に、青の言葉が真ん中より下にないといけないのです。
これが逆になっているこのお手紙は、言葉遣いは丁寧でも、××先生に対してとても失礼なお手紙になってしまいます。

ではどうすればマナーを守ったお手紙になるのでしょう?
先ほどのルールに気をつけながら書き直してみましょう。

ようこそ全書芸一般部(漢字)~手紙の書き方土屋彩明(新潟県見附市)長谷川陽幸書道教室



こんな風に書くといかがでしょう?
内容的にはほぼ同じですが、言葉の順序を入れ替えたりして「相手に関する言葉は紙面の真ん中より上に、自分に関する言葉は紙面の真ん中より下に書く」というルールの通りになりましたね。

ちなみに細かいところをご説明しますと

  • 「私の方も」のところのように、自分に関する言葉の前を思い切り空けて位置を調整してもOK
  • 同じように、相手に関する言葉を上に出すために半端なところで改行するのもOK
  • 濃いピンク、濃い青で示した言葉は「最優先で位置を調整するべき言葉」で、色が薄い「銀座の△△ホール」や「◎◎市立ホール」「書友達」などの言葉は「位置を気をつけた方が良いけれど、優先度がやや低い言葉」です。優先度が高い言葉の位置を調整するためなら、薄いピンクの言葉が紙面の下寄りに来たり、薄い青の言葉が紙面の上寄りになったりしても構いません。でも可能なら薄いピンクの言葉が行の一番下や、薄い青の言葉が一番上には来ない方が良いでしょう
  • 最初の手紙で黄色く色をつけた「全書芸誌」のように「相手にも自分にも関わる言葉」で紙面のどこに置くか迷う言葉は、上にも下にも寄せすぎずに真ん中辺りに置くと良いようです

ザックリご説明すると、こんなところでしょうか。

この「相手に関する言葉は紙面の真ん中より上に、自分に関する言葉は紙面の真ん中より下に書く」ルールはハガキでも封書でも同じです。

慣れないうちは特に1回でこのスタイルに書くのは難しいので、本番と同じ体裁の便箋やハガキ大の紙を用意して、何回か下書きと手直しをすると良いようです。

またこのルールは最近生まれたものではなく、中国や日本の手紙では長いこと当たり前に使われてきたものです。
知っていると、博物館で昔の人のお手紙などを見る時にちょっと楽しいことがあります。

現代でもハガキや封筒に相手の住所氏名を書くときは上詰め、自分のものは下詰めで書くのが普通ですし、お中元やお歳暮の掛け紙でも「自分の名前は紙面の真ん中より下に書く」スタイルが一般的なので、案外私たちの感覚に残っているルールかもしれませんね。

ちなみに「、」や「。」は「正式なお手紙では使わない」ことになっています。
今でも冠婚葬祭関連のお手紙(結婚式の招待状など)では使わないことも多いですね。
でも現代では普通のお手紙なら使ってもルールやマナー違反という訳でもなく、あまり目くじらを立てるものではないようです。
ただ、毛筆で書くときは句読点は省略した方が美しく、書きやすい気がします。

実際にお手紙を書こうとすると、他にも「これはどうしたら?」「何か良い言い回しがないかな」と迷うことがあると思いますが、こういう時は素直に文例集などを参照するのがお勧めです。

私は学生の時に実用書の授業の教科書だった『暮らしの毛筆百科』(石川芳雲著/二玄社)という本にお世話になっています。
こちらはお手紙だけでなく表書きや賞状の書き方まで網羅していて大変便利な本です。
定番の本なのでお近くの図書館や古書店にもあるかもしれません。

『暮らしの毛筆百科』(石川芳雲著/二玄社)ようこそ全書芸一般部(漢字)~手紙の書き方土屋彩明(新潟県見附市)長谷川陽幸書道教室


『暮らしの毛筆百科』(石川芳雲著/二玄社)ようこそ全書芸一般部(漢字)~手紙の書き方土屋彩明(新潟県見附市)長谷川陽幸書道教室



偉そうに色々ご説明しましたが、私もお手紙を書くのは得意ではなく、特に目上の先生にお送りする手紙は何日もかかって書いたりします。
そして投函してからも「あのお手紙で良かったのか」と考え込んだりもしますが「とりあえず最低限のマナーは守れたはず!」と思うと大分気が楽になります。

お手紙のマナーは「先方に失礼がないように」というのももちろんですが、この「自分が自信を持ってお手紙を書く」ためにも、守れるものは守っていくと良い気がします。

また、お手紙のマナーは時代や地域、相手との関係性で変わる部分もありますから、自信のない時は投函前にご自分の先生や周囲の方に試し読みをしてアドバイスを貰うのもお勧めです。




全書芸誌11月号にもお知らせを掲載頂きましたが、10月28~29日に新潟県見附市で毎年恒例の展覧会を開催致します。
今ちょうど準備をしているのですが、団員の他にも賛助作品や小学生なども書いた一字書作品も並ぶ楽しい展示になりそうです。
よろしければぜひ遊びにいらして下さい。