中国ドラマ「瓔珞えいらく」で観る懸腕法と安徽省涇県産の宣紙

牽洋


好きな歴史上の人物は?と聞かれると
決まって「邪馬台国の女王卑弥呼」と答えている。
学生時代、日本史の勉強がスタートした直後に女王と聞いただけで強烈なインパクトだった。

今回、登場する「えいらく」という女性もかなり強烈な印象。
近ごろドラマの中のセリフからハッと気づきを得ることが多々ある。

現在、TOKYO MX1で放映中(再放送)の中国ドラマ「瓔珞」の舞台は、18世紀、清の第6代皇帝・乾隆帝(けんりゅうてい)の時代。清朝最盛期の紫禁城(北京:現在の故宮博物院)だ。
刺繍女官から皇后にまで上り詰める中、宮中での様々な権力争いに頭脳明晰な主人公・瓔珞(えいらく)が立ち向かう姿が痛快な作品だ。

しかし、中国ドラマはとにかく長い。全70話。
この時代に特徴的な男性の辮髪姿(後頭部のみ髪の毛を伸ばし編み込まれた髪型)に違和感を感じながらも、このドラマでは男性も女性も墨を磨ったり、筆をとるシーンがよくでてくるので、長編ドラマの中でもメリハリがついて自然とグングン見進められてしまう。

頭脳明晰な彼女にも弱点あり!な姿が垣間見えた第14話「盗まれた書」の回。
字を書くのは苦手な瓔珞だが、書道に関する知識とキレのある思考が発揮された。

皇后から書道を習うことになった瓔珞は、筆を持つ手の震えがおさまらないため、天井から輪っかにした紐を吊るし、輪の中に手を入れ、手を固定させながら書の練習。
懸腕法(けんわんほう:肘を机や脇につけずに宙に浮かせて書く方法)を身に着けようと奮闘する姿が映る。

__ほーう、こんな練習方法があるのね。

__懸腕法は不安定な分、小筆では難しい書き方だが、昔の人は懸腕法が主流だったのか……!?


瓔珞は練習の過程を記録するために練習に使った紙に番号を振って保管していた。

__上達の過程が一目でわかるので、私たちも練習した日付を入れておくと自分の励みになるよねっ。

などなど、ドラマを観ながらブツブツ……。


そんなある日、その中の1枚だけ消えていることに気づく。

瓔珞を貶めようとする敵との闘いが始まった。

なくなった番号の紙は敵に悪用され罠にハメられ、皇帝の前に突き出されてしまった瓔珞だったが書道の知識が発揮。
瓔珞は、皇帝の前で、宣紙を使うのがもったいなく、薄葉紙で練習していたと主張。
この罠(瓔珞の筆跡を真似て書かれた偽物の紙)は、「白くきめ細やかで、中国安徽省涇県産宣紙の中でも最高級品であること」から自分が書いたものでないことを証明した。


__おー、これはこれはどこかで聞いたことあるぞ。これはもしや紅星牌のことだろうか!?


歴史や書道のことなど知識的なことを覚えるのが苦手な自分には、こうやってドラマの中で映像が字幕と共に出てくると点と点が繋がってくる。

やっーと折り返し地点に入ったところだが、序盤のストーリーから王羲之の名前が出てきたり、皇后が篆書で「后」という字を書くシーンが出てきたりと、「書」が良いスパイスになっているドラマである。


蘭亭序中国紹興書聖王羲之曲水の宴曲水流觴康煕帝蘭亭碑乾隆帝
清の第6代皇帝・乾隆帝御筆


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